立山の引越

 

石黒 外志 さん(中新川郡上市町)

 やはり良い写真、惹かれる写真を得るには、楽して良い結果を創出することはできない。

 石黒さんの作品には、写真作画の綿密さが画面構成から伺え、同氏の作品づくりに対するスタンスが十分理解し得るものであった。立山を象徴するこの風景は、普段、ポスターや観光パンフ等で御馴染みのロケーションである。しかし、観光バスが擦り抜ける絵は見るものの、トラックが山道を登っているのは珍しい。その背景には、許可されたトラックでなければ走れないという規制があることを知る。

 従って、コンスタントにトラックが走って来ることは考えにくいことで、石黒さんはそんなダイヤグラムまで把握しているかのように雪壁を背にした悪条件の中でも落ち着いて描写し、決して偶然ではない結果として審査員が一推したものである。

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 「雨のち晴れ」

 

雨のち晴れ 川友 貴暢 さん(富山市)

 雨上がりの駐車場に、アルミバン車が1台止まっている。

 今回、雨上がりの作品は他にも見られたものの、水溜まりに映り込んだトラックをシンボリックに見せた作品は同氏しかいなかった。水面に映った車体は、アスファルトの粒子と消えかかった白いライン、そして雲の切れ間から差し込もうとする陽の光がソラリゼーションの質感を再現している。

 雨も上がって再び街に出ていくトラックも想像できるし、水の偏光性で映り込みのスタンスがローアングルとなったこと、実車をカットしたことも主体性を高めたポイントとなった。

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 「祭りの日」

 

玉生 康博 さん(婦負郡八尾町)

 祭りのスナップは、一般のフォトコンで題材とされるテーマであるが、その活気さとは裏腹に山車を横目に申し訳なさそうにトラックが擦り抜けて行く。

 玉生さんは、そもそもこの街の祭りをターゲットとして現地を訪れたに違いないが、活気付く前の準備段階と言える空間を見逃さなかった同氏の視点が、何処となく不似合いな対象物を融合させる面白い結果を生み出した。

 じっと見てると、樹木の緑、山車の赤、トラックの黄色と偶然にも信号色だ。沿道を取り巻くギャラリーの姿が殆ど写り込んでいないのも、不思議な空間を創出している。
祭りの日


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 工事現場

 

 

村上 久信 さん(中新川郡上市町)

 村上さんは3年連続の上位入賞者となった。今回も他の力作を寄せて頂いたが、昨年に比べてやや傍観的な視点でとどまっているような気がしてならない。ダイナミック且つストレートな作画が同氏本来の良さと認識している。

 今回の作品は広角レンズで建設現場を纏め、尖鋭的で正確な建設現場の相貌が表現された。資材を運んできた大型トレーラ、空を貫くクレーンと要素の多さに飽きのない反面、作画は纏まり過ぎている。抜け道のない決まった単調さが、逆に見終わった後に残されたものを払拭させてしまうことになりかねない。

 そこには決して借り物ではない村上さん自身の写真の背景が残っている訳で、そのような意味で今回の作品は弱かったような気がする。


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 「ちょっと 待って!!」

 

ちょっと まって!!

 

瀬川 有子 さん(富山市)

 「道の駅」の駐車場に並ぶトラックたち。

 突如、女性が駆け出し、忘れ物をしたのか、トイレに行くのかは定かではないが、行方がやけに気になる。良く見ると、トラックに混じり観光バスの姿も見え隠れしている。旅客と貨物が互いに演出し会う空間に、女性の走り出す姿が気になって仕方がない。

 一瞬の出来事にカメラを向けた彼女の視点に、思惑は深まるばかりである。


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 「おーい がんばって!!」

 

おーい がんばって!! 川村 友子 さん(富山市)

 宅配輸送は、一般社会と直結する親しみ深い輸送モードである。

 マンションの一角に到着した宅配車と扇形のベンチなど、洗練された街を形成する要素が優しい作画として表現された。ベランダから俯瞰で覗いた主婦の視点は、親しみやすい宅配輸送を提示したものである。

 確実に物が届く、という当たり前の中に改めて見据えてみると、生活を運ぶ輸送の原点を顧みることができる。 


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 「ドライバー」

 

河上 二朗 さん(富山市)

 日夜を問わないターミナルの機能する様を、定点撮影の如く狙った同氏の努力を認めたい。

 彼の殆どの作品は夜の作品で、同じ現場を低速でのストロボ同調による作画で構成したものである。夜の撮影は昼間のそれとは全く異なる性質を持っていて、露出の掛け具合で左右されてしまう。

 河上さんの場合、ある意味でテストパターン的な写真で画題を変えて応募したものの、個々の写真が単調になってしまったことが悔やまれる。とりわけ、「ドライバー」は超広角レンズの特性と相俟って流動する車両と運転者を的確に捕らえ、ライトの光跡が一層夜のターミナルを演出するポイントとなった。


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 「宝の山を運ぶ」

 

宝の山を運ぶ
中川  恕 さん(富山市)

 港に隣接する木材原料となるチップを輸送する現場を押さえ、聳えるコンベヤーを支える脚が荷捌き場の臨場感を倍加させている。

 どれくらい現場に居たかは定かではないが、ショベルの作業に併せ他にも写真を撮っていると思われる。この写真で見る限り、丁度定量積載で積み込みが終わった時点でのカットと思う。近寄り難い作業現場に着目し、作業プロセスの結果同氏が選んだ作品は、まさにこれから宝に生まれ変わろうと出発する様を的確に捕らえている。チップの質感と匂いも感じられるし、無駄のない写真である。

 今後とも、産業を支えるトラックの真の姿を見据えてほしいと願うとともに、作業を見ながら角度を変えた撮影で臨んでほしい。


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 「おそくまで 5963(ごくろうさん)

 

川村 貴人 さん(富山市)

 河上さん同様に、夜の風景を捕らえた川村さんの苦労が実った。

 国道沿いに三脚を立てて、渋滞に巻き込まれた大型トラックを捕らえた。動き出した内側の車線を行くライトが残像として浮き出され、交通量の多さを物語っている。

 明日の朝には各地へ着く幹線トラック輸送へのおもいやりが、こうした悪条件なシュチュエーションにおいても迷わない同氏の作画に共感を覚えてしまう。
おそくまで 5963


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 「 魚 市 場 」

 

魚市場
 
新井 豊一 さん(氷見市)

 市場の活気は、競りが終わってからも続いていた。

 品質を落とさずに全国に運ばれていく鮮魚輸送は、時間との戦いでもある。安全且つ迅速・的確に届けられる今日の水産物輸送の進展は、車両や保冷設備の高度化がもたらした結果でもある。モノの流れの出発点である市場に佇めば、自ずと狙いが見えてくる。場所によっては制約があるものの、全国に向けて出荷されていく物流の要衝を見ているだけでも得るものがある。

 新井さんは第1回の最優秀賞受賞者である。2回目は惜しくも賞を逃しているが、前回から現場主義の写真で応募されている。継続性をもった写真創作に励んでいる努力も分かるし、コンセプトもしっかりしている方だと認識している。しかし、被写体に対する距離感が固定化されているようで、自分の心地好いスタンスが確立されてしまっているように思える。それを自分では壊したいのだが、言うことをきかない自分と格闘している。

 誰もが一定の質のレベルに来ると、自分の写真が嫌になったり、固定観念を砕こうと繰り返す時期がある。一連の同氏の写真を見ると望遠レンズを使用したものが殆どで、望遠でないと写真が撮れない状態にはなっていないか。主体を強調し単略化する特性はあるものの、ややもすれば自分が被写体に入って行くことを拒んでしまう結果になりかねない。被写体が強調され決まっているにもかかわらず、そこに従事する人の汗が伝わらないのは何故か。新井さんの心と距離感が一番良く知っているはずである。

 

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