時代の変遷

 

 

新井 豊一 さん(氷見市)

 新井豊一さんの「時代の変遷」は、高岡市内の貨物側線跡をフィールドにトラックを構成したものである。鉄道貨物からトラック輸送への時代の変遷が表現され、今となっては通ることのない鉄路の相貌がタンポポに浸食されようとしている。形あるものが朽ちて再生される様は、妙に美しさを感じてしまいます。タンポポの生命力とは裏腹に、欠落したレールの横には新しいトラックが見え隠れして、作者の意図を満してくれた。

 新井さんの洗練されたフレーミングとディテール描写が、より力強い写真を創り上げる結果となった。写真上はトラックを脇役にし、逆に軌道にウエイトを置いた点は正解であった。トラックももう少し見てみたいという欲求が、より興味深さをそそるエッセンスとなっている。新井さんは第一回の最優秀賞に輝いているが、自らの足で稼いだ撮影スタンスに共感を覚える一方、イメージにより近付けようとする努力は三者の眼に正確に伝わるものだ。

 輸送のウエイトがトラックにシフトされた今日と、次代のトラックと鉄道がリンクする形態を望む姿も想像出来る写真である。

 

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 「瓦運び」

 

 

盛崎 トシ子 さん(高岡市)

 この地方特有の入母屋造りの建造物が今、解体されようとしている。この様な産業廃棄物輸送の観点からもトラックの役割は大きいものだ。作者が過ごした家屋なのかは定かではないが、少なくとも近い関係にあることだけは確かである。3人の作業員の配置や一枚の瓦が宙を舞う情景を正確に捕らえている。暮らしの舞台として人々の生活を見て来た入母屋には、そんな歴史の重さを感じてしまう。

 見慣れた風景が目の前で消えて行く光景に、冷静にシャッターを切れた盛崎さんの姿勢を評価したい。写真の記録性を最大限に活かしたこの作品は、必ず後世に残る貴重な記録写真として位置付けられるに違いない。機会があったら、再び同じ現場に足を運んでカメラを向けてほしい。そこには、また違った盛崎さんの想いが表現される「定点写真」として生まれ変わることだろう。

 

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 「こんにちは」

 

此川 勝海 さん(黒部市)

 此川勝海さんの「こんにちは」は、宅配便がより生活空間に密着した輸送モードであることをストレートに表現した作品であった。宅配便をテーマとした作品は他にも多かったものの、お孫さんを抱えたおばあちゃんの手には小さな荷物が届けられ、女性ドライバーと荷受人との接点が十分窺える作品である。

 トラック輸送においても女性ドライバーの進出が目覚ましい昨今、親しみやすい女性ならではの気配りやキメ細かさがこの作品には満ち溢れていて、無駄のないフレーミングが一層写真の強さを醸し出した良い写真である。

 

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 雪の朝

 

玉生 康博 さん(婦負郡八尾町)

 玉生康博さんの「雪の朝」は、降り積った雪を拭う乗務員の姿を捕らえたものだ。悪コンディションの中でも写真を撮るというチャレンジ精神が好結果をもたらした。モノトーンの中でもトラックとのコントラストが映える構成に処理している。何より輸送と安全というものは切り離すことは出来ない永遠のテーマであり、こうした運行前の作業は外から見えにくいものだ。しかし、あえてスポットをあてた玉生さんの眼は、乗務員の陰の部分に労を労う思いが感じられるのである。

 決して、晴の日だけが写真ではないし、様々な状況の中で作者自らがどう処理して行くのかが鍵となる。苦労なくして写真は伝わらないし、立ち向う作者の姿勢が作品創りを左右する要素であることを認識した。


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 「カマキリとカニ」

 

 中川 恕さんの「カマキリとカニ」は、実にユニークな作品だ。作者が言う様に、見れば見るほどそれに見えてしまうから面白い。建設重機は、一見近寄り難い威圧感があるものの、見方を変えれば興味深いフォルムが見えて来る。ダンプトラックの荷台から生えたカマキリも、トリック性があって三者が何か始めそうな様相を思わせる作品だ。 そう、子供たちに人気の機関車トーマスという物語があるが、機関車や貨車、そして建設機械それぞれに愛称があり、意志を持って行動するそのストーリーを思い出した。

 立ち入りが許されるのであれば、角度を変えて撮ってみるのもいい。トラックも入れないといけない、カマキリとカニもという具合だから整理がつかない。いっそ、後ろに回って逆光でシルエットにしてしまえば、もっとシンボリックな作品になったであろう。

 

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 「比美乃江大橋を渡る」

 

 

金剛 圭也 さん(婦負郡八尾町)

 金剛圭也さんの「比美乃江大橋を渡る」は、氷見のシンボルとも言えるロケーションで、霧立つ山並みを背景に大型冷凍トラックが行く。海産物を満載したトラックが全国へ運ばれていく光景も、海沿いの街であることも認識できる。

 対向車線を行く乗用車から察するに、信号が赤から青に変わった直後の光景であろう。何より作者の(人間の)目線に立ってトラックを見据えているのが好感がもてるし、大橋のワイヤーの相貌と対向車の先頭を行く軽自動車もポイントになって画面を一層際立たせている。

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 「ガス注入中」

 

村上 久信 さん(中新川郡上市町)

 村上久信さんの「ガス注入中」は、言わば特殊輸送にスポットをあてた作品である。荷降し場としても、病院、工場や大学等の研究施設など極限られた場所でしかお目にかかれないものである。

 村上さんは同コンテストでも入賞されているベテラン作家であるが、毎回他の作品とは一味違うテーマにチャレンジした内容を見せてくれる。言わば、作品創りのプロセスを大切にしたもので、ハードルが少し高い撮影現場との接点をクリアできる同氏の人徳があるのかも知れない。空気中に気化した白煙が現場の特殊性を表現している。

 ドライバーが記録を取り、湧き立つ白煙とは裏腹に冷静さがプロへの安心が感じられる。村上さんは、いつも安定したフレーミングの持ち主で、好感が持てるのだが、現場が許されるのなら、ドライバーの動きともに緊張感も見せられる絵も挑戦してほしい。

 

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 「大橋を渡って仕事場へ!」

 

 

平井  隆 さん(中新川郡上市町)

 平井 隆さんの「大橋を渡って仕事場へ!」は、正に撮影ポイントを熟知した作者の綿密さが作品全体から窺え、宅配車を先頭に乗用車、そして行き交う車の空間描写も素晴らしい。

 現場に立ち、幾度となく車両を押さえたものと察するが、半逆光が創り出す車両の影もハイライトの路面に映し出され、いいアクセントになっている。ゆとりある空間と規則的に配された外路灯からも安心と正確さが感じられ、平井さんの写真に対する探求心が表れたものだ。

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 「早 春」

 

湯口 千鶴子 さん(滑川市)

 湯口千鶴子さんの「早春」は、雪化粧した立山連峰を背景に雄峰大橋を渡る大型トラックを押さえたショットであった。
 少し長めのレンズで山々と車両を強調し、安定したフレーミングが、トラック輸送の確実性や信頼性を表現するきっかけとなっている。彼女は、以前からこの場の情景を撮りたかったという。撮影コンディションと思いが一致し、揺れる橋上の中でも澄み切った晴天で露出を稼げたことが何よりである。

 今度は時間帯に変化をつけて夕方はどうか、時間経過を通してそれぞれの顔も表現してほしい。

 

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 「山間の合掌文化財を守る 徐行運転」

 

 

橘  隆司 さん(氷見市)

 橘 隆司さんの「山間の合掌文化財を守る徐行運転」は、橘さん自身の優しさが十分感じられる作品であった。

 そしてタイミング良く同じ企業のトラックが連なって走って来る様を逃さなかった。写真で見ても本当に優しく走っている様に見えて、世界遺産の地に相応しい情景にまとまっている。芽葺き家屋と古い商店の佇まいも分かるし、歴史的建造物との調和がとれている。橘さんのその観察力と被写体に対する思いやりが、写真創作の中で生かされていると思う。
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