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令和7年度 災害物流専門家研修を開催しました

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令和7年度 災害物流専門家研修を開催しました

令和7年度 災害物流専門家研修を開催しました

令和7年度 災害物流専門家研修を6月10日(火)~11日(水)の2日間、富山県トラック会館において開催しました。
受講事業者・団体:トナミ運輸㈱ 高岡通運㈱ 西濃運輸㈱ 南砺物流㈱ 富山ミナト運輸㈱ 佐川急便㈱ 伏木貨物自動車㈱ 北陸トナミ運輸㈱ 富山県危機管理局 (一社)富山県トラック協会

 研修は、㈱NX総合研究所から佐藤大二郎シニアコンサルタント、川目俊夫コンサルタントの両氏を講師に迎えて実施されました。
 開講に先立ち、富山県トラック協会の林伸治専務理事から「我が国は災害が多いが、被災者に物資が届かないことがある。円滑な輸送ができるように知識を向上させていただきたい。」と挨拶があり、その後4つの分野に分けられた講習がスタートしました。

 「①基礎知識編」では、過去の災害時における物流支援の課題と教訓について確認しました。主な課題として、支援物資が自治体庁舎内で滞留しスムーズに被災者へ届かなかったことや、物流に関する知識が十分でない自治体職員が物資の仕分けや管理を担ったことが挙げられました。また、災害物流専門家の現地配置が遅れたことで初動対応が混乱した事例や、燃料の不足、道路環境の悪化、道路情報の不足といった輸送面での問題も報告されています。
加えて、自治体と関係機関との連携が不十分で、役割分担が不明瞭であった点も大きな反省材料となっています。
支援物資の供給方式については、被災地からの要請に基づいて支援する「プル型支援」と、状況を見越して先行的に支援を行う「プッシュ型支援」の2種類があることを学びました。それぞれの特性を理解した上で、状況に応じた柔軟な対応が求められます。
災害物流専門家は、物資拠点の運営や輸送支援に加え、自治体との調整や役割分担の明確化においても重要な役割を担っています。災害時における円滑な物資輸送を実現するためには、こうした専門家の的確な対応と、平時からの連携体制の構築が欠かせないことを改めて確認しました。

 「②拠点編」では、災害発生時における物資拠点の設置・運営に必要な実務について学びました。
まず、物資拠点の開設にあたっては、自治体への助言を行いながら、トラックの出入りや必要面積、床の荷重制限や高さ、使用可能な資機材の確認など、現地の条件に応じた適切な拠点レイアウトの作成が求められることを確認しました。
さらに、災害時ならではの課題についても具体的に検討が行われました。例えば、トラックの円滑な「受付・誘導」体制の整備や、予定施設・既存用途によって使用が制限されるケースへの対応、物資ごとの保管面積を原単位で算出する方法(例:毛布・飲料水・段ボールベッド等)などが挙げられます。また、不動在庫や賞味期限切れ物資、義援物資の取扱い、スタッフの一斉休憩による作業停止、余震や盗難への備え、さらにメディアや議員など来訪者への対応といった実務面での留意事項も多岐にわたることが共有されました。
また、自治体と連携し、出荷指示や作業の進行、他自治体からの応援職員への指示系統などについて役割分担を明確にしておくことが、混乱を避け、拠点運営を円滑に進めるために極めて重要であることを再確認しました。

 「③自治体対応編」では、災害時における物資輸送の実務について、講義を通じて具体的な解説がありました。まず、輸送業務に関しては、自治体と災害物流専門家の役割分担が重要であることが説明されました。具体的には、自治体が輸送の指示を行い、それに基づいて災害物流専門家が配車を担当する体制が示されました。
さらに、発着地の荷役環境を踏まえた車両選定や、一部の車種における車両確保の困難さについて言及がありました。加えて、特殊車両通行許可や緊急通行車両確認標章、危険物の指定数量など、輸送に関連する法規制の管理にも触れられました。
また、自衛隊車両の特徴として、悪路走破能力が高い一方で物資積載量が限られている点にも注意が必要であることが示されました。
輸送オペレーションに関する内容では、「通れるマップ」などの活用による通行可能ルートの把握方法や、警察等からの情報だけでは十分でない場合があることが紹介されました。さらに、着地の荷役環境や車両の仕様(例:テールゲートリフターの有無)を踏まえて、必要な人員体制や資機材を判断する必要があるという点についても解説がありました。

 「④自治体対応編」では、災害時における自治体との連携に関して、制度的な背景や実務上の課題について説明がありました。支援物資に関する自治体の体制は大きく「①統括部門」「②物資部門」「③物流部門」に分かれており、災害物流専門家は主に「③物流部門」での活動が想定されることが示されました。
また、国・都道府県・市町村の間では役割分担が明確に定められているものの、その結果として物資の調達から避難所への配送までを一貫して管理する機関が存在せず、連携の難しさが課題となっていることが指摘されました。
研修では、自治体と民間の連携を円滑に進めるうえで、「帳票」の整備や運用が重要なツールとなることが説明され、様式や単位(例:「1食=おにぎり2個」など)に課題がある場合には、専門家からの提案や助言が求められる場面もあることが紹介されました。
また、「手順と役割分担」の整理についても、物流専門家が積極的に協力し、必要に応じて改善の提案を行うことが望まれるとされました。さらに、自治体によって民間との連携に対する柔軟性や対応力に差がある点にも触れられました。
加えて、災害時の運賃・料金に関しては、混乱を防ぐためにも可能であれば平時から協議を行い、早い段階で取り決めを行っておくことが重要である旨が説明されました。

 グループ演習では、参加者を6人のグループに分け、研修で学んだ災害物流の知識をもとに、物資拠点レイアウトの作成についてグループワークを行いました。
 輸送原単位をもとに、必要な保管面積(パレット枚数)を算出する演習、東京ビッグサイトを例に、物資拠点レイアウト図を作成する演習の2つの演習を行い、グループごとに発表を行いました。
 発表を聞いていた受講者から質問も飛び出し、活発な意見の交換を行うことができました。

 研修終了後には、修了証が授与され、受講者は災害物流専門家研修修了者としてデータベースに登録されました。登録は個人ベースのため、転勤・転職した場合もデータベースに反映されます。
 今回受講いただきました方々におかれましては、災害時において被災地に派遣される災害物流専門家として知見を活かされることを期待しております。

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